第5回S&L会 講演要旨
「帆船模型にはまった私」

■講師 日吉 泰史さん
    テレビ朝日社友、ニューヨークを始め海外特派員を歴任、国際渉外経験豊富、帆船模型製作歴25年の大ベテラン

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■日時 2014年1月15日(水)
■場所 テレビ朝日社友会(六本木ヒルズタワー16階)A会議室
■資料 レジメ「帆船模型製作にハマっている私」
    ウッディジョー社「木製帆船模型カタログ」
「海洋冒険小説一覧」「海洋冒険関連映画タイトル一覧」
    自作帆船模型「チャールズヨット」1/64モデル Woody Joeキット

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■内容
① 何かの趣味にハマることは大切である。ハマっていると老化しない。自分は帆船模型の製作。これには創意・工夫が必要で、完成すると達成感がある。これを機会に自分でもやろうと言う人が増えてくれたら嬉しい。
また帆船作りには帆船模型の材料や作り方等の知識も必要だが、歴史的背景の知識なしには興味は半減する。そして知識が増えるとますますハマっていく。
② 帆船の歴史は古く、既に8000年前のエジプトの壁画に描かれている。
15世紀に幕を開けた大航海時代、バスコ・ダ・ガマのインド航路開拓、コロンブスのアメリカ大陸発見、マゼランの世界周航など、帆船が地球を駆け巡って大活躍した。
帆船は18世紀末から19世紀初めのナポレオン戦争、とくに1805年英仏が対決したネルソン提督のトラファルガー海戦あたりにピークを迎えたが、推進は風まかせという最大の欠陥を解決できなかった。
帆船の命を絶ったのは、ワットによる蒸気機関の開発と普及、それにスエズ運河の開通であった。運河のあたりは無風で帆船は進むことが出来なかったからだ。
③ それにも拘らず今日まで帆船が命運を保っているには理由がある。それは帆船が人間の作った最も美しい建造物であるということ。
トラファルガーの海戦でネルソン提督が座乗した戦列艦ビクトリーやティー・クリッパーのカティサークなどは実物が残されている。
また最近は石油燃料の高騰もあり、コンピュータ制御で金属製の帆を持つ高速帆船復活の兆しが注目されている。
④ 帆船はセイルボート、セイリングシップというが、帆を張るメインマストが高いのでトールシップ (Tall Ship) とも呼ばれる。カティサークのメインマストは高さ47m、ビクトリーは60mもある。
日本では帆船は鎖国のために発達しなかった。遠洋に行く必要がなかったからである。千石船などは竜骨も無い沿岸航海用の比較的小さいものであった。そのため明治維新後も外国に発注せざるを得ず、自前での建造はしばらく後の事である。
※17世紀初め仙台藩士支倉常長が遣欧使節をローマに送ったときの帆船「サン・ファン・バウティスタ」はスペイン人の指導で作った。(現在、復元されて宮城県石巻市にある)
⑤ 船舶模型の製作を始めることになったきっかけは、40年以上前にニューヨークに赴任したとき、ロスアンゼルスの20世紀フォックス・スタジオで
パニック映画「ポセンドン・アドベンチャー」に使用される豪華客船ポセイドン号の2mの大きさの模型に見とれたことである。その後1984年あたりからこつこつと帆船模型を作り始めた。
⑥ 帆船と言えば何といっても海戦であるが、海洋冒険小説で帆船のフリゲート艦や戦列艦が活躍する代表的なものに、ボライソー・シリーズ、ホーンブロワー・シリーズがある。自分が帆船模型にのめり込んだきっかけにもなったこのシリーズはどちらもイギリス海軍の士官候補生が新米で乗組んでから経験を積み、海戦で鍛えられて将校・艦長へと出世して行く物語である。史実と虚構を巧みに織り交ぜたエンターテインメントになっている。模型の世界でも一番人気は大砲を積んだフリゲートや戦列艦である。
⑦ 帆船模型の基本は必ず実在した帆船を基に作ることだ。もともと各国の王侯・貴族・大商人が自前の帆船(軍艦や商船等)を作る前に2~5mの縮尺版の模型を作ったことが始まりだった。だから木造であり、材料も木・布・ロープ・鉄・銅・真鍮(鎖や碇、大砲等)など本ものと同じものを使う。
⑧ 製作方法は大きく分けて二つある。一つはキットで、販売されているものを使う。もうひとつはスクラッチビルドといって設計図を基に一から自前で製作するものだ。
キットは、60cmくらいのもので3万円くらい、これで製作には1年はかかる。ここに持ってきた帆船模型「チャールズヨット」は10カ月かかった。かかる費用を月割にすれば趣味としては安いものである。
この「チャールズヨット」は自分にとって7隻目の帆船模型で、「世界の帆船模型展」に出品したもの。 
因みに「チャールズヨット」は帆船模型の基礎的なもので、ビギナーのためにこの船の製作だけの解説書が出ている。
帆船模型はこの他に、ストラクチャー・モデル(構造模型)、カット・モデル(断面)、ミニチュア・モデル、ボトルシップ、ジオラマ等がある。興味のある方は様々な世界のメーカーのHPを見るといろいろ参考になる。またキャノンのHPでペーパークラフトのページにカティサークの作り方が載っているので無料でダウンロードして作ってみるのも面白い。
今製作中のものは、「バウンティ」、叛乱がおきたことで有名な戦艦である。完成にはあと1年かかる。
⑨ キットの入手方法だが、日本にはキットメーカーが「ウッディジョー」という1社のみ。イタリア・イギリス始め世界のメーカーにはネットでアクセスできる。
キットを作る工具としては、基本であるナイフ・ボンド・ペンチ・ドリル等の他にいろいろ自分で揃える楽しみがあるが、冶具といって自分で必要な器具を作ることも楽しい。
例えば船体のカーブに合わせて貼る外板を曲げる、小さな同一サイズの板を沢山切る、などどのような器具を作って作業したらいいかを考える。
作業工程は、まずキールとフレームを組む。それから外板貼り、甲板貼り、船上構造物の製作、マストを立て、ヤード(帆桁)を取り付け、ロープを張ってゆく。帆は自分で縫い、ロープは静索、動索を用途別に分けて張る。
このようにいろいろ考える、工夫をする、そして手指をこまめに動かすことはボケ防止には絶好だと思っている。
⑩ 現時点での完成品のギャラリーには、「ビクトリー・カットモデル」、「エンデバー」、「チャールズヨット」、「カタロニア船」、「カティサーク」、それに帆船航海に欠かせなかった砂時計の蒐集。これは30分計が主だが、船の速度を計測するのにはもっと短時間のものを使用した。但し、ガラスが壊れやすいのであまり残っておらず当時のものは少ない。
あとスウェーデンの戦列艦「ヴァーサ」(処女航海に出る際重心が高すぎて転覆した事で有名)は3年かかってまだ半分しか出来ていない。
⑪ 完成品について夫婦のせめぎ合いになるのは置き場所の問題。プラスチックケースに入れないとホコリがついてしまうのだが、場所をとるのでどうしても置いておけない場合は寄贈してしまう人もいる。(区役所、図書館、病院等によくある。)
⑫ 帆船模型を作る人はやはりリタイア組が多く、私が所属している「ザ・ロープ」や「横浜帆船模型同好会」65~70歳が主である。
また始めるなら「チャールズヨット」が一般的でよい。
なお、完成品を買う人もいるが50万円くらいするのもある。
(以下余談として)
○主な帆船の実際の大きさ
 カティサーク 貨物船 全長 86m  マスト 47m
 ビクトリー  戦艦  全長 69m  マスト 60m   3,500t
 日本丸    練習船 全長 110m  マスト 45m   2,500t
○帆船を舞台とした主な映画
「マスター・アンド・コマンダー」-良く出来ている
「パイレーツ・オブ・カリビアン」-映画を作るに当たり実物大のセットを作ってしまった。
「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」-気球に帆船を吊るすという奇想天外の発想のSFアドベンチャー。
  その他「スタートレック」(宇宙船)、第二次世界大戦の海戦映画があるが、
帆船に比べてロマンに欠ける。
 ○風を受けて進む帆船はいかにして風上に進むのか-帆を操作して風に向かってジグザグに進む。
 ○帆船のスピードは5ノット程度だった。段々に高速化してティー・クリッパーの「カティサーク」が中国から紅茶を運搬するのに、それまで18~24カ月かかっていた期間をわずか3~4カ月に短縮したことは有名。
(記録 福島)
以 上


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2014.01.23 / Top↑
まとめ