酔句会短信
2014年5月
 
 酔句会の句会が行われる銀座は、かつて街路樹として柳が植えられ、春になると芽が吹き出し、5月には新緑の美しい長髪が風にそよいでいました。今その姿を見る事はかないませんが、句会会場松坂屋ビル跡裏の喫茶店には、薫風を運ぶ「新緑」の句が今回も多数寄せられました。緑と朱色、緑と白、美しいコントラストの風景が甦ります。
 
新緑や巫女小走りに御朱印所(潔)
 新緑や水面に映る白いシャツ(賢)
 新緑に背向けブランコ漕ぐ幼女(俊夫)

 新緑に覆われた樹木に近づくと、動物や昆虫たちが出迎えてくれます。そのなかで、のっそり独自の動きを見せているのが蝸牛(かたつむり)です。今回の「兼題」ですが、作者によって様々な捉え方があるものですね。
 
かたつむり宇宙に続く殻の奥(伸彦)
 煩悩はじとりと腹にかたつむり(花筏)
蝸牛墓石の銘の読み難き(和子)

明るい陽光のなかで、逆に人生のはかなさを感じる時もあるのがこの季節です。別れて時がたてば、なおさら逝った人のことが偲ばれます。再生や復興は、早く…と願わずにはいられません。

陽炎や友の棺の消ゆるまで(和子)
瞑目のみ仏に副う白つつじ(和生)
薄暑光港船なく網もなく…閖上港にて…(賢)

それにしても5月の季節はあまりにも美しすぎます。言葉を尽くしても讃えきれないこの月を送り、まもなく「雨の月」を迎えます。

荒れ草を鋤かずままなり五月晴れ(花筏)
五月晴れ深山の社水接待(和生)
ひとしきり雨揺らすなり藤の花(和子) 
2014.05.27 / Top↑
まとめ