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第18回S&L会 講演要旨
「大韓航空機撃墜事件とその経緯」
■講師 斉田 祐造さん
     テレビ朝日社友。営業、編成、国際、BS朝日等多岐にわたって活躍。退職後、50年来の夢だった小説を書き始め、今年10月処女作「ブラックメイル」を出版した。タイトルの「ブラックメイル」とは『強請(ゆすり)』、『恐喝』の意味で、1983年に起きた大韓航空機撃墜事件をモチーフにした国際謀略ミステリーである。B5判2段組みで上下2巻合わせて800ページ近い大作、主な舞台はロスアンゼルス、モスクワ、ベルリンと世界にまたがり、日本人作家には珍しいスケールの大きな作品となっている。
大韓航空機撃墜事件にまつわる謎と、世界を股にかけた傑作サスペンス「ブラックメイル」を書いた経緯について語っていただいた。
注.この講演は聴講者の中に未読の人がいたため本の内容にかかわる部分については細心の注意を払って行われました。

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■日時 2015年11月11日(水)11時30分~13時30分
■場所 テレビ朝日社友会(六本木ヒルズタワー16階)E会議室
■内容
① 「ブラックメイル」執筆の経緯
大韓航空機撃墜事件の裏に国家間の謀略、強請(ゆすり)があったかもしれないという構想で書いた。
学生時代からいつか本を書きたいなと思っていたが、大学4年のとき縁あって、取材で来日していたアメリカの雑誌「ニューヨーカー」のスタッフライターのアシスタントを1ヶ月務めたことがあり、彼から「君も将来本を書いたら・・・」とアドバイスをもらったことがあり、深い考えもなくイエスと安請け合いをしていた。入社後はそんなことを考える余裕はまったくなかったが、編成部長を経て国際局長になって企画したのが「クライシス・シリーズ」で「キューバミサイル危機」、「アポロ13号奇跡の生還」の放送に次いで考えたのが大韓機撃墜事件。ところが調査報道では定評のあるイギリスBBCですらスムーズな取材が期待出来ないというほど資料が公表されてなく、アメリカのナショナルアーカイブ(国立公文書館)でもほとんどが機密扱いになっていた。この時点で既に20年前の事件であったにもかかわらずである。その不可解さの奥深さは忘れがたく、それならば、退職後にでもドキュメンタリータッチでミステリー仕立てのフィクションを書いたら面白いだろうなと思っていた。

② 大韓航空(KAL)007便撃墜の経緯
1983年の日本時間で9月1日未明、KAL007便がサハリンの南西端にあるモネロン島沖で、領空侵犯によりソ連軍戦闘機に撃墜された。同機は正規の航空路をソ連寄りの北に500kmも逸脱していた。乗客乗員合わせて269人全員が死亡、国籍別では韓国人が105人、次いでアメリカ人62人、日本人28人等である。
航路逸脱について、当時のソ連はスパイ行為のための意図的な領空侵犯であるとし、アメリカはパイロットのうっかりミスと主張、国連で激しい 応酬があった。
事件後すぐに米ソの多くの艦船や航空機が事件解明に欠かせないブラックボックスを回収すべく当該海域に熾烈な捜索戦を展開した。双方ともぎりぎりの妨害活動を行い、捜索活動は非常に緊迫した状態だった。
ブラックボックスには墜落直前30分間の操縦席内の音声記録とフライトデータが記録されているが、徹底した捜索にもかかわらず発見できなかったとされた。ところが実際には1カ月後にソ連軍はは回収に成功していたが、ソ連当局は回収の事実を公表せずKGBの管理下で完全に封印してしまった。その後ソビエト連邦崩壊直後の1991年11月、エリツィンロシア大統領からブラックボックスが突然韓国に返還された。事件から10年近くも経っての返還だった。何故、いまさら・・・疑問を感じた。
自分は学生時代体育局の航空部に所属し、グライダーに乗っていたので飛行機の動きについては若干の知識もあり、パイロットの友人も多く、何人かが領空侵犯には疑問を持っていた。

③ 領空侵犯と撃墜についての分析
日本での出版物では、領空侵犯はうっかりミス説に与する柳田邦男の著作や、それに真っ向から反論する遺族の人たちが中心となって編纂した分厚い研究書がある。
ICAO(International Civil Aviation Organization 国際民間航空機
関、国連の専門機関のひとつで本部モントリオール)の調査委員会の報告 書も、乗務員の怠慢と慣性航法装置の操作ミスとしている。だが、アメリカにもニューヨークタイムスや航空専門誌などに意図的侵犯を唱える論評は多く、中でも、公開されたデータから意図的侵犯を証明するB.アラルダイス氏(同路線を長く飛んでいたフライト・エンジニア―兼パイロット)の綿密な分析は説得力があり、多くの研究者から高い評価を受けている。
ICAOの論点にも疑問はあり、すっきりと真相が解明されたとはとても言いがたい。
たまたまこの講演の矢先、先月10月25日にアメリカの国立公文書館が公開した機密文書は(ワシントンポスト紙)1983年、事件当時のアメリカのレーガン政権とソ連のアンドロポフ政権の間は、核使用も含めていつ戦争になるかもしれないという1962年のキューバ危機以来の危機的な状況だったことを伝えている。大韓機の航路逸脱はアメリカ政府(軍情報部やCIAなど)による戦略的な意図的侵犯の可能性を十分うかがわせる情報である。

④ 「ブラックメイル」について
ここから先は本の内容に関わって来る。
「ブラックメイル」はフィクションだが、ポイントの部分についてはその信憑性が疑われてはいけないのできっちりと書き込んだ。それもあって大部になってしまった。また外国人の名前には苦労した。
フィクションだが、あの事件の裏にはこのような国と国との取引があったのではないかと自分は思っている。
本のタイトルは当初「ブラックメイル~強請の海」としようと思ったが、出版社のプロの意見でサブタイトルをはずして「ブラックメイル」にした。
英訳や映画化は当初は考えたが、内容からして海外から余計な思惑や勘ぐりを持たれることもあり得ると考えやめた(原作にそれだけの力があるかどうかは棚に上げて)。
ドキュメンタリータッチを目指したので派手なドンパチはなく、男女の色ごとは苦手なこともあり省いたが若干反省している。
 主人公は当初日本人をと思ったが、複雑な国際的政治経済が絡まることからリアリティを持たせる意味で日本人の母を持つアメリカ人に設定した。
 嘘は書けないので、取材の際にも例えばロスの警察事情は編成部長時代に知り合ったジミー佐古田氏に教示を受け、ロシア取材には現地事情に強い黒田伸樹氏に同行してもらった。取材にチャーターした車のドライバーが運よく元公安関係者だったらしく、こっちの意を受けてなかなかの場所にも案内してくれた。ある日の昼食帰りに、黒田君の交渉でパトカーに白タクをしてもらったこともあった。そのくらい取材当時(07年)のロシアは混乱していて、その警官は「現場は安い給料、上はでたらめ。このくらいの内職は当然」とぼやいていた。
 ソ連崩壊後急激な資本主義化・自由主義化で極端な大金持ちが生まれ、「オリガルヒ」と呼ばれる7人の超新興成金がマフィアと手を組んでロシア経済を牛耳り、クリシャと呼ばれる企業用心棒が総会屋まがいの活動をおこなっていたが、プーチン政権による強硬なオリガルヒ排除政策が実を結びつつあるころだった。本書の中ではこれらも重要な役割を持っている。
 プロットやストーリー展開は全部自分の考えだが、人名もその国の人名から選んだ。準主役の勤務するモスクワ警察の地区分署は架空だが、地名はもちろん、ホテルやレストランなど何処の国でも若干を除きすべて実在である。登場する人物や企業は実名と架空が混在するが、その分別は読みながら判断してもらえれば、それも一興と思う。

本を書きたいと言う大学時代からの夢は、テレビ朝日時代も頭に残ってはいたが、サラリーマンと作家(?)の二足のわらじは自分にはまったく不可。 
退職時にあるパーティで「これから何をするつもりか」と問われ、「本を書こうと思っている。ミステリーを書きたい」とみんなの前でついつい公言してしまったが、実現してホッとしている。
 書き終えた今はエアポケットにある。次作が書けるなら(体調の関係であまり自信はないが)まったく別ジャンル(ドキュメンタリータッチは疲れる)を考えている。食べ物の話を若干推理仕立てにした、言わば「苔猿の壺」現代版ともいうべきユーモア小説を書きたいなあと思っているが、さてどうなることか?                          以上
                   (記録 福島)
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2015.11.24 / Top↑
まとめ
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